宅配便の再配達は、毎年業界と社会に大きな負担をかけ続けています。
ドライバーの過酷な労働環境は深刻化し、再配達率の高さは、物流コストの膨張や地球環境への影響も無視できません。
そんな中、国土交通省が打ち出したのが“置き配”を宅配の「標準サービス」に位置づけ、従来の「手渡し配達」を追加料金制とする大胆な改革案です。
この仕組みが実現すれば、荷物の受け取り方法が根本から変わり、消費者・事業者・社会にも大きな衝撃を与えることになるでしょう。
本稿では、検討の背景から課題、今後の進め方まで、現時点で分かる限り詳しく解説します。
1. 背景:再配達削減と労働負担軽減の緊急性

国交省は「再配達率を今年3月末までに6%へ」と目標を掲げましたが、昨年10月時点では約10%と高止まりしており、達成は困難な見通しでした。(参照:9asahi.com)
再配達が積み重なることで、運転時間の増加や残業の常態化といったドライバーへの負担が深刻です。
2. 標準運送約款の見直しで置き配を「基本」に
宅配業界は、契約上どの方法で配達するか曖昧でしたが、現行の「標準運送約款」には置き配に関する記載はありません。
これを今回、正式に「標準サービスとして置き配を明記」し、手渡しはオプション化—つまり「追加料金制」に位置づけようという構想が示されました。(参照:asahi.com)
3. 有識者会議による検討の開始とスケジュール
国交省は、近く有識者による検討会を立ち上げ、年内をめどに改定方針を取りまとめる予定です。(参照:asahi.com)
会議では、手渡しへの追加料金の設定方法や、置き配に伴う盗難・プライバシー・誤配送リスクへの対応策も議題に挙げられています。
4. 置き配推進のメリット

再配達の大幅削減
荷物を対面接触なしで届けられ、再配達率の低下が期待されます。
ドライバーの労働時間短縮
一件当たりの時間を短縮でき、労働負担の軽減に寄与します。
物流コストの効率化
時間指定や再配達に比べてコストが下がり、全体の収益性が向上する可能性があります。
5. 課題と懸念点

盗難・いたずらのリスク
荷物が玄関先に置かれることで盗難や誤配送のリスクが増加します。
実際、置き配人気の裏で「誤配送の落とし物38倍」といった報告もあります。(参照:9asahi.com)
安全・衛生上の問題
特にマンション共有部分での置き配には、消防法・避難通路への影響もあるため、共用部使用の可否にも慎重な調整が必要です。(参照:iijima-kousan.com)
住民や地域特性に応じた対応
都心と郊外で懸念の度合いが異なるため、地域ごとに最適化が求められます。
6. マンション管理規約との整合性
国交省は2019年以降、マンション管理規約の標準モデルに置き配に関する例外規定を導入しています。
共用廊下への長時間放置を防ぐため、「24時間以内に取り込む」などの運用ルールを盛り、自治体・管理組合との調整も行われています。(参照:iijima-kousan.com)
7. 今後の見通し

手渡しの追加料金設定の導入
具体的な価格帯や徴収方式を有識者会議で検討。
消費者・事業者の理解促進
置き配活用のメリット・留意点を各ユーザーに周知し、理解形成を図る。
試行地域の設定
都市部や特定地域をモデルケースに、まずは実証段階へ。
宅配ボックス整備と連携
共同住宅では宅配ロッカーの普及・デジタル化を進め、置き配と併用した受け取り体制を整備します。(参照:x.com)
8.「置き配を標準サービス化、手渡しは追加料金へ?」 まとめ
国交省が検討する「置き配を標準化し、手渡しは追加料金制にする」案は、再配達率の削減やドライバーの労働負担軽減など、宅配業界を進化させる可能性を秘めています。
もちろん、盗難リスクや共用部分の安全性、住環境への配慮も重要で、制度設計と周知活動がカギを握ります。
今後の有識者会議の動きやモデル試行から目が離せません。