【自然科学】雷におへそを取られるとの迷信はなぜ生まれた?

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「雷が鳴るとおへそを隠しなさい!」——小さいころ、誰かにそう言われたことはありませんか?
大人に言われると、なんとなく怖くなっておへそを手で押さえたくなります。
けれど、本当に雷はおへそをねらってくるのでしょうか?
そして、なぜそんな言い伝えが生まれたのでしょう? ここでは、「雷」と「おへそ」の不思議な関係について、昔の言い伝え、科学的な背景、そしてそこに込められた親の思いや教えをやさしく解説していきます。

目次

雷って何?どうやって起こるの?

まずは、「雷」そのものについて少し知っておきましょう。
雷は、空の中で大量の電気がたまり、放電されるときに起こります。
特に夏の積乱雲(入道雲)の中では、氷の粒や水の粒が激しく動いてこすれ合い、大量の静電気が発生します。

そして、雲の中や雲と地面のあいだにたまった電気が放電されると、「ピカッ!」と光り、「ゴロゴロドーン!」と音が鳴ります。
これが雷です。
雷のエネルギーはとても強く、人や木に落ちると命に関わることもある危険な自然現象です。

「雷が来たらおへそをとられる」ってどういう意味?

言い伝えのルーツは江戸時代?

「雷がおへそをとる」という言い伝えがはじめて広まったのは、江戸時代と考えられています。
当時は今のように電気や雷についての科学的な知識がなかったため、人々は雷を「神さまの怒り」や「妖怪のしわざ」としてとらえていました。
雷のことを「雷神(らいじん)」と呼び、太鼓をたたいて天から地上に怒りを落とす存在と信じられていました。
そんな中、「雷が鳴るとおへそをとられる」と言われるようになったのにはいくつか理由があります。

理由①:子どもがお腹を出して寝ているとお腹を壊すから

もっとも有力な説は、「おへそをとられるぞ」と言って、子どもがお腹を出したまま寝ないように注意するためです。
昔の家はすき間風が多く、冷えやすい環境でした。
夏場でも雷が鳴る時は気温が急に下がることがあります。
そんなときにお腹を出して寝ていたら、おなかをこわしてしまいますよね。
そこで、大人たちは「雷が来たらおへそをとられる」と言って、お腹を隠させたのです。
これは、言葉をやわらかくして子どもに伝える「ことわざ」や「しつけの知恵」だったとも言えます。

理由②:雷は金属に反応するため、おへその金属が心配?

これはやや珍しい説ですが、おへそにピアスや装飾品をつけることがある現代では、「金属に雷が落ちやすい」という知識と結びついて、おへそが危ないと考える人もいます。
実際に雷は電気をよく通す金属に反応しやすいのは事実ですが、家の中にいる限り、それが直接おへそに落ちるようなことはありません。
とはいえ、昔の人たちは「体の中に金属があると危ない」と信じていた可能性もあります。

理由③:おへそは体の中心=大事な場所だから

おへそは生まれてきたときに母親とつながっていた「へその緒」の名残です。
つまり、命の始まりと深く関わる大切な場所です。
そうした意味で、昔の人たちはおへそを「神聖な場所」や「魂が宿る場所」と考え、「雷神さまがねらう」と信じたのかもしれません。

「大事なところを守りなさい」というメッセージが、雷=おへそを取るという言葉に込められていたとも言えます。

科学的に見た「おへそ」と雷の関係

現代の科学では、雷はおへそに特別反応するわけではありません。
雷は、高いところや金属、湿ったものに落ちやすいという特徴があります。
したがって、雷が鳴っているときは、

  • 木の下に立たない
  • 高い建物の上に出ない
  • 金属製の傘やゴルフクラブを持たない
  • 水辺から離れる

などが重要であって、おへそはあまり関係がありません。

ですが、「雷が来る=おへそを隠す」という行動は、結果的に服を整えることや、室内で安静にすることにつながるため、理にかなっていた面もあります。

「雷におへそを取られるとの迷信はなぜ生まれた?」まとめ

「雷が来たらおへそをとられる」という言葉は、単なる迷信のように思えるかもしれませんが、そこには親が子どもを思いやる気持ちや、自然に対する畏れ(おそれ)が込められています。

昔の人たちは、雷のような大きな自然現象を目の当たりにしたとき、「どうやって子どもに注意を促すか?」を考えました。
その結果、「怖いけど印象に残る言葉」として、このような表現が生まれたのです。

雷は今でも私たちにとって怖く、そしてとても大きな自然の力を感じさせるものです。
「おへそをとられるよ!」という言葉の裏には、「ちゃんと体を大事にしなさい」「自然をなめてはいけないよ」という先人たちの教えが込められているのです。

雷の音を聞いたら、ぜひ一度おへそをそっと押さえながら、そんな優しい気持ちを思い出してみてください。

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